花千骨 第50話 (翻訳 1/2) ※幻(となる予定)の最終回

     24,2015 00:07
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    邦題 : 花千骨
    原題 : 花千骨
    英題 : The Journey of Flower 2015

    監督 : 林玉芬(リン・ユーフェン)/ 高林豹(コー・ラムパウ)
    主演 : 霍建華(ウォレス・フォ)/ 趙麗穎(チャオ・リーイン)


    【ご注意】

    ※英文字幕を、中文の助けも借りて日本語字幕にしたものです。
     中国語→英語の段階で意訳されているものが多々ある上、
     英語字幕自体、誤字脱字誤訳が多いため、元の内容と異なる
     可能性があります。

    ※セリフのほとんどに対応していますが、あくまで素人が
     趣味で訳したものなので、「ざっくり内容が知りたい」方向け
     です。正確さを求める方は、公式放送をお待ちください。

    ※素人翻訳ではありますが、転載・再利用などはご遠慮ください。

    楽しんでくださる方がいらっしゃれば、幸甚です。


    ++++++++++++++++++++





    七殺殿の氷室で、千骨が『洪荒の力』を
    自在に制御できるようになるための修練を行っている。


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    千骨「必ず、私の体内の『洪荒の力』を
       制御できるようになってみせる」

      「絶対に成し遂げてみせるわ」

      「そうして、みなにこの『洪荒の力』は、
       恐れるようなものではないと証明してみせる」

      「邪悪なものでもなければ、制御出来ぬものでもないと」

      「致虚极 守静篤 万物并作 吾以观复」(※1)

    千骨の目が赤く光る。


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    千骨が、重い身体をひきずるようにして歩いている。


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    千骨(彼はあなたを養い、あなたを育て、苦労して教え導いた……)

      (あなたの身体を冒す猛毒からあなたを救おうとし)(※2)

      (あなたに代わって罪を背負い)
      (数多の消魂釘をその身に受けた)

      (あなたを庇うため、長留と世界に対し、罪びととなった)

      (今日に至っては、虜囚の身に甘んじている)

      (花千骨、いったい誰を怨むことが出来るというの?)

      (あなたはずっと、彼にとって重荷でしかなかったのよ)

      (あなたのために、彼は罪を贖い)
      (決して師としての責任を逃れようとはしなかった)

      (それなのにあなたは?)

      (あなたの苦しみは当然よ)
      (自分で招いたことじゃないの)


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      (どうしてこんなことになってしまったの……)

      (あなたと同じ苦しみの中に彼を巻き込み、
       世界全体をも巻き込んで)

      (あなたまさか、永遠に自己憐憫の中で
       運命に屈するつもりなの?)

      (ほかの人たちが、あなたのために、ひとり、
       またひとり、自分を犠牲にするのを目にしながら……)







    長留。自室で摩厳(モ・イェン)が、
    ふたつの験生石を手に、ぼんやりと座っていた。

    験生石のうちひとつは暁の色に光り、
    もうひとつは既にその輝きを失っている。

    そこへ、笙蕭默(シェン・シャオモ)が姿を見せた。


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    摩厳の手にあるふたつの験生石を見てつぶやく。

    笙蕭默「この験生石は……」

    摩厳「……十一(シーイー)のものだ」

    摩厳は、色を失った石を掲げてそう言った。
    そして、もうひとつの暁の色に染まった石を示して続ける。

    摩厳「これは、竹染(チュラン)のものだ」

    笙蕭默が嘆息した。

    笙蕭默「師兄」
       「必ず他に解決方法があるはずです」

    摩厳「もう言うな。既に決めたのだ」

    頑なな摩厳の言葉に、笙蕭默が息を吐く。

    摩厳「師弟。来てくれ」
      「ここへ座って、少し話し相手になってはくれぬか」

    請われた笙蕭默が、摩厳の隣に腰を下ろす。

    摩厳「師父が去り、東花も去った」
      「子画までもが行ってしまった」

      「今では、我らふたりしか残っておらぬ」
      「この長留は、どんどん静かになるばかりだ」

      「周りの者がみな、ひとり、またひとりと
       この地を離れ、この世を去り」

      「長留が衰退し、仙界が困窮していくのを見ていると」

      「その間ずっと、自問せずにはおれぬのだ」
      「これらすべての人々、そしてこれらすべての状況は……」

    そこでうつむき、言葉を切った摩厳は、
    隣に座る笙蕭默に視線を向けた。

    摩厳「師弟」
      「私は本当に道を誤ったのだろうか……?」


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    摩厳の問いに、笙蕭默は首を振った。


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    笙蕭默「いいえ。あなたは間違ってはいませんよ」
       「あなたも掌門師兄も、何も間違ってはいない」

       「ただ……、彼は傲慢すぎたのです」
       「そしてあなたは、あまりに頑な過ぎた」

    笙蕭默の言葉に、暁色に光る験生石をじっと見つめる摩厳。


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    七殺殿。

    一度は粉々に壊れたものの、修復し鈴の形に戻した宮鈴を
    見つめる子画の脳裏に、竹染の言葉がよみがえる。


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    竹染『それに、彼女があなたに対してどういう感情を
       抱いているかは、心の底で、あなたが一番よく
       おわかりのはずだ』


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      『表向きどのように偽ろうと、あるいは取り繕おうと関係ない』
      『これは避けられぬ事実だ』

      『あなたが彼女に対し、少しの愛情も
       抱いていないなどとは信じられぬ』

      『私はただ、気付かせて差し上げているだけだ』
      『自らを欺くことは止めたほうがよいとね』

    子画はひとり、嗚咽を漏らした。







    慙愧の念に堪えぬとばかり、地面に頭をつけ泣いている子画に、
    躊躇いながら千骨が歩み寄る。

    すぐそばまでは近づくことができず、
    少し離れた場所に膝をつくと、震える声で話しかけた。

    千骨「師父」
      「恐れないで」

    千骨は、子画に向けて手を振りかざし、彼の記憶を抜こうと
    するが(※3)、当の子画がそれを振り払う。

    振り払われた千骨は、子画が腕を押さえて呻くのを見て、
    咄嗟にその腕を取った。

    袖の衣をめくり、そこに現れた傷を目にして
    一瞬で表情を強張らせる。


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    千骨「絶情池の水……?」

    千骨の声が震える。

      「なぜ?」

    千骨の問いに答えられず、子画はただその場に
    くずおれるように俯いて、嗚咽を漏らす。

    千骨は、まるで世界がひっくり返ったかのような衝撃で
    うまく声を出せずにいた。

    囁くように声を絞り出す。

      「では……」
      「あなたはずっと、私を愛していたの?」

      「あなたは、私を愛していたんだわ……!」

    千骨は反射的に後ずさると、どこか非難めいた叫びを上げた。

    子画は嗚咽を漏らすのみで、答えようとしない。

    やがて事情を呑みこんだ千骨が、顔を歪めて笑う。

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    千骨「あなたは、私を愛しているのね……」

      「でもどうして?」

    ふと浮かんだ疑問に眉をひそめ、子画のほうへ再びにじり寄る。

      「私を愛しているならなぜ、あれほど残忍で
       無慈悲なことが出来たの……?」

      「私を愛するということは……」

      「あなたにとっては、そこまで耐えがたいほどの
       恥辱だというの?」

    千骨の瞳から、大粒の涙がこぼれおちる。

    千骨の問いには答えず、子画は彼女のほうへ
    膝でにじりよると、ゆっくりと袖をまくった。


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    そして、絶情池の水によって出来た傷を、
    みずから皮と肉ごと削ぎ落としてみせた。


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    その傷口を見て、魂が抜けたように茫然とする千骨。

    子画は、その目に鬼気迫る光を宿し、
    まっすぐに千骨を見据えると、掠れる声で言った。

    子画「こんな傷ひとつに、何の意味がある?」


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    子画の額から、玉のような汗が滴り落ちる。

      「そなたを愛していたら、何だと言うのだ?」
      「そなたを愛していなかったら、何だと言うのだ……!」

      「私たちが共に在ることは、永遠に叶わぬ」

      「永遠に、叶わぬのだ……!」

    魂のすべてを込めて千骨を睨み据え、
    絞り出すようにそう言った子画に、
    千骨は思わず息を飲み、反射的にその首に手をかけた。


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    千骨「……白子画(バイ・ズファ)!」


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      「私を愛していると認めるより、
       肉を削ぎ、骨を削るほうがましだというのね」

    千骨は子画を突き放すと、その場を立ち去った。


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    千骨が去った後、自らを揶揄するように、
    投げやりな笑い声をあげる子画。


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    子画は、自ら肉を削いだ怪我を腕に負ったまま、長留へ戻った。

    広間にいた摩厳、笙蕭默、そして火夕(ファシィ)と
    舞青蘿(ウ・チンルオ)が驚いて出迎える。

    笙蕭默「師兄!」

    舞青蘿「尊上がお戻りに!」

    腕から血を流す子画に驚き、その手を取って
    傷を確かめた摩厳と、その傷を目にしたみなが
    驚愕に目を見開く。

    傷の由来を察した笙蕭默が思わず視線を伏せた。

    摩厳「子画」


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      「子画……、そなたの手は……」

    子画「ご明察の通り。絶情池の水です」
      「私はずっと、自分を欺いていたのですよ」

    摩厳「子画」
      「そなた……!」

    笙蕭默「師兄!」

    怒りにふらついた摩厳を、笙蕭默が支える。
    そして、弟子ふたりに命じた。

       「何をぼんやりしている! 薬を取って来るのだ」

    叱責された火夕が、まだ茫然としている舞青蘿を促し、広間を出ていく。

    火夕「行こう」

    摩厳が怒りに震える声でつぶやく。

    摩厳「おのれ花千骨……!」
      「断じて生かしてはおかぬ……!」

    千骨に対し、怨嗟の言葉を吐く摩厳に、
    子画が静かに否定する。

    子画「師兄。これは、小骨には何の関係もないことです」
      「すべては、私自身の過ちなのです」


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      「私が今回戻ったのは、あなたを説得するためです」
      「これ以上、七殺殿に追い打ちをかけることは無用だと」

    摩厳「そのようなこと二度と言うな!」
      「此度ばかりは、絶対に慈悲をかけることは出来ぬ!」

    子画「師兄」

      「七殺殿の人々は、既に悪を離れ
       善に立ち返ったのです」

      「長留と七殺派の争いを止めることは不可能ではない」

      「怒りや恨みは手放してください」

      「再び人々を塗炭の苦しみへと追いやることは止めて頂きたい」

    摩厳が笙蕭默の手を振り払い、子画に向き直った。

    摩厳「よかろう。約束しよう」


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      「しかし、そなたも私に誓わねばならぬ」
      「これよりは、二度と再び、花千骨には見えぬと」

    摩厳の言葉に、子画はただ悲しみをたたえた瞳を伏せた。







    蜀国の皇宮を、軽水(チンシュエイ)が
    孟玄朗(モン・シェンラン)を探して走り回っている。


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    軽水「孟兄さん!」

    孟玄朗「軽水!」

    軽水のあとを、孟玄朗が追いかけるが、
    彼を彼と認識しない軽水は、気付かない。

    軽水「孟兄さん、どこにいるの!」

    孟玄朗「軽水!」

    軽水「出てきて、孟兄さん!」
      「孟兄さん!」

    その時、ふと足を止めた孟玄朗は、
    庭の片隅に佇む人影に気がつき、目を見開いた。


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    孟玄朗「なぜ君がここへ?」

    紅の衣を身にまとった千骨が、孟玄朗の問いを受けて口を開く。

    千骨「この世の中で、あなたはたったひとりの友人よ」


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      「あなたに会いに来たの」

    孟玄朗が、ゆっくりと千骨に歩み寄る。

    孟玄朗「こんなことになっても、まだ私に会いたいと
        思ってくれるのか?」

       「この人生で思い残すことは、もう何もないな」

    そう言って穏やかに笑った孟玄朗を見て
    千骨が悲しみを含んだ視線を向ける。

    千骨「朗兄さん」

      「ひどく年を取ったように見えるわ」
      「すぐにはあなただとわからなかった」

    孟玄朗「人はみな老いるものだ」

       「長留で我らが共に過ごした日々が懐かしくてならぬ」

       「惜しむらくは、誰も過去へ戻ることは
        出来ないということだ」


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    千骨「そうね。誰もみな、後戻りは出来ない」

    孟玄朗「千骨」

       「私はこの人生において」
       「少しも君を守ることができなかった」

       「だが私は知っている」
       「花千骨が間違っていなかったことを」

    孟玄朗の言葉に、千骨は自嘲した。

    千骨「人はみな、私が間違っていると言うわ」
      「私に、正道に立ち戻れと」

      「彼らはみな私を恐れ、恨み、ひたすら私の死を望んでいる」

    孟玄朗「だが私は君を信じる!」
       「君の選択は正しかったのだと、信じている」

       「……もしいつか、どこへも行き場がなくなったなら」
       「皇宮の門は、永遠に君のために開かれている」

       「ここには、君を傷つける者は誰もいない」

    千骨が静かに微笑を浮かべた。

    千骨「朗兄さん」
      「ありがとう」

    そこへ軽水が走ってくる。
    千骨を見て首を傾げる軽水。


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    軽水「あなた、だあれ?」
      「私の孟兄さんを見なかった?」

    自分のことはおろか、孟玄朗のことすらわからなく
    なっている軽水に驚き、千骨は黙って孟玄朗に視線を向けた。

    軽水「おなかがすいたわ! ごはんが食べたい!
       食べたいの!」

    孟玄朗「わかったわかった。食べに行こう」

    軽水が子供のように駄々をこね、わめきたてるのを
    孟玄朗が慣れた様子でなだめている。

    千骨は、変わり果てたかつての友の姿を、
    ただ見つめることしかできなかった。







    絶情殿の自室でひとり佇む子画のもとへ、
    笙蕭默が姿を見せる。


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    笙蕭默「本当に、二度と千骨に会わないつもりなのか?」

       「何があろうとも、彼女を見放したりは
        しないと言っていたじゃないか」

    子画「私に、彼女に会うどんな資格があるというのだ?」

    そう答える子画の声は、どこまでも静かだった。

      「彼女は今も私を恨んでいる」

      「今生において、おそらく彼女は
       二度と私に会いたいとは思わぬだろう」

    笙蕭默「愛も恨みも、どちらも心が執着しているからこそだ」

       「だがなぜあなたは、彼女を愛さぬよう
        自分に強要し続けるんだ?」

       「絶情水の傷跡すら除けるというのに」

       「それはつまり、彼女に執着していると
        いうことではないのか?」

    笙蕭默はため息をついた。

       「千骨があなたを恨むのも無理はない」

       「あなたにとってその愛は、
        本当にそこまで耐えがたいようなものなのか?」

    子画「この愛を耐えがたいものだと思ったことはない」
      「あるいは、恥辱だとも」

      「ただこの愛は間違いだと、それだけだ」

      「私は彼女の師だ」

      「私に、選択肢はないのだ……!」


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      「私はこれまで、ことあるごとに何度も彼女に、
       気持ちを手放すよう強要してきた」

    そういって、子画は自嘲するような笑みを浮かべる。

      「だが思いもよらなかった」
      「まさか私自身が」

      「……私自身が、その過ちの中にこれほど深く
       囚われ、振り払うすべも見つけられぬとは」

    笙蕭默「師兄」

       「彼女の愛を受け入れることができるなら」
       「彼女のすべてを受け入れることが出来るはずだ」

       「それなのになぜ自分の心を束縛するんだ」

       「なぜ自らをこの絶情殿に縛り付け、
        閉じ込め続けなければならないんだ?」

    子画はただ黙って瞳を伏せ、首を振った。

    笙蕭默「手遅れにならぬうちに、すべてを取り戻せるうちに」
       「千骨を連れてここを離れるんだ」


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       「この広い天地の中で、どこへだって行くことはできるだろう」

    子画「……駄目だ。彼女には、私から遠く離れたところにいてほしい」

      「彼女を傷つけることしか出来ぬ私からは、遠く離れたところに」

      「彼女に愛を忘れさせ、恨みを忘れさせるために」
      「これが私が彼女にしてやれる唯一のことだ」

    笙蕭默はため息をついた。

    笙蕭默「では、師兄自身はこれからどうするつもりなんだ?」

    子画は息を吐き、首を振った。

    子画「……酷く疲れた」
      「私は隠棲するつもりだ」

      「なろうことなら、いつか理解できる日が
       来ることを願っている」

      「道とは何か」
      「……愛とは、何かを」


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    長留の大殿の広間に、尹掌門が入ってくる。

    尹掌門「世尊」
       「弟子たちはすべて、外に集まっております」

       「いつでも出発できます」

    摩厳「わかった」

    報告を終えた尹掌門が広間を出ていく。
    その後を追おうとした摩厳を、駆けつけた笙蕭默が止めた。

    笙蕭默「師兄!」


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       「七殺殿には攻めこまぬと
        掌門師兄に約束したではありませんか」

       「師兄の療養中に、なにゆえ自らの言葉に背き、
        突然攻撃を仕掛けるなどということができるのですか!」

    摩厳「花千骨が死なぬ限り、子画が生死劫を
       振り払うことは、永遠にあたわぬ」

      「子画の腕の傷を、そなたも見たであろう」
      「彼は既に理性を失っているのだ!」

      「ただ花千骨を殺すことによってのみ、すべてを止め、
       元のあるべき姿に戻すことができるのだ」

    笙蕭默が顔を歪める。

    笙蕭默「理性を失っているのは彼ではない。
        それはずっと、あなたのほうだった!」

    摩厳「もうよい!」

    叫んだ笙蕭默を、摩厳が遮った。

      「それ以上言う必要はない」

      「もしもその意思があるのなら、私と一緒に来るがいい」
      「望まぬのであれば、ここに残り長留を護れ」

    そう言って出て行こうとした摩厳の前に笙蕭默が回り込み、
    腕を広げてその進路を妨げた。


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    笙蕭默「今回は、何があろうと行かせませんよ」

    だが摩厳はためらわず、立ちふさがる笙蕭默に向け一撃を放った。

    近距離からの不意の攻撃をまともに食らった笙蕭默は、
    床に倒れこみ、胸を押さえる。

    笙蕭默「師兄、あなたという人は……!」

    摩厳「これ以上、私を阻むな」
      「私の代わりに、子画のことを頼む」


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    摩厳はそう言って笙蕭默を見つめると、
    やおら外に向かって声を張り上げた。

      「誰か! 儒尊を仙牢に連れて行け!」
      「私の命令なく、外に出すことはならぬ」

    笙蕭默「師兄!」

    抗議しかけたものの、笙蕭默はその場で昏倒してしまった。

    摩厳は、笙蕭默をその場に残し、立ち去った。







    自室で瞑想していた子画は、
    突然鳴り響いた鐘の音に、目を開いた。


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    長留に、外敵の襲来を告げる鐘の音が響き渡る。

    弟子「あなたたち、急いで!」

    弟子「これはいったい……」

    すわ、敵の襲来かと弟子たちが慌てる中、
    違う理由でそわそわしている火夕と舞青蘿。

    火夕「なぜまだ尊上はいらっしゃらないんだ?」

    舞青蘿「私にわかるわけないでしょ!」


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    その時、子画が広場に姿を現した。


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    子画の姿を認めた火夕が、顔を輝かせて駆け寄る。

    火夕「尊上!」
      「尊上、いらしてくださったんですね!」

    子画「十二回の鐘が鳴った」
      「まさか七殺派が攻撃を仕掛けてきたのか?」


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    舞青蘿「違います違います!」

    舞青蘿が慌てて否定し、火夕と共に子画の前に跪く。

    舞青蘿「尊上、どうか私たちの罪をお赦しください」

       「私たちが自分で鐘を鳴らしたのです」
       「でも、他に方法がなかったんです!」

       「世尊が、世尊が人々を率いて、七殺殿を攻撃に行きました」

       「それを止めようとして、師父(※笙蕭默)が
        仙牢に入れられてしまったのです」

       「尊上、どうしたらいいですか?」

    子画「そなたたちの師父を救わねば。私と一緒に来るがよい」

    火夕「はい!」

    歩き出す子画を追って、火夕が舞青蘿を促す。

      「行こう」







    草原では、摩厳たちの一行の上を、空を飛ぶ輿が一台
    優雅に追いこしたかと思うと、彼らの目の前に降り立った。


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    摩厳「花千骨!」
      「そなた一人で死にに来たのか?」

      「七殺殿のものどもはどうした!」

      「来れば死は免れぬゆえ、敢えて戦わず、
       みな逃げたのではないのか?」

    千骨「そなたらの相手など、私、花千骨一人で十分だ」
      「ただ、白子画を渡しさえすれば、他の者の命は助けてやろう」

    摩厳「花千骨! 死ぬがいい!」

    しかし摩厳が放った一撃を受け止めたのは
    千骨ではなく、突然姿を見せた竹染だった。

    竹染が千骨に向けて礼を取る。


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    竹染「神尊に申し上げます」
      「私にしばし時間を頂きたく」

      「先に私に、摩厳に対する恨みを晴らさせて下さい」
      「片方が死ぬまで引かぬつもりです」


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    輿の中から、気だるげな声が返る。

    千骨「……いいわ」

    輿に向かって、竹染が一礼した。

    摩厳「叛徒め! まだ悔い改めぬつもりか?!」

    竹染「悔い改めろだと?」
      「私は幾年も念入りに計画を練っていたのだ」

      「それを、仇を打つ前に、悔い改めろとは」
      「笑い話にもほどがある」

      「あの時、おまえが私の母を殺した時、
       後悔する心があったというのか?」

    摩厳「くだらん話はやめろ!」
      「今日こそはここで、すべてを終わらせてくれる!」

    言うなり摩厳が、一撃を繰り出す。
    激しい攻防を繰り広げるふたり。


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    だが、最後の一撃を受けて地面に転がったのは、竹染のほうだった。

    胸を押さえ、半身を起した竹染が吐き捨てる。

    竹染「私の負けだ」
      「殺せ!」

    摩厳「待っているがいい。花千骨を殺したのち、
       長留の規律に則りそなたを処罰する」

    摩厳の言葉を聞いて、竹染が、心底可笑しそうに笑い声を上げた。


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    竹染「おまえたち全員でかかったところで、
       洪荒の力を止められるとでも思っているのか?」

      「なんというお笑い草だ」

    摩厳「今日は、たとえ我らがみなすべて共に滅びようとも」
      「花千骨に、葬られる地とてない死をくれてやる」

    そこへ、後を追ってきた子画と儒尊が舞い降りてきた。


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    子画「師兄」
      「いったいどれだけ私を騙すおつもりですか」

      「再び戦を引き起こし、いたずらに死を招くのはおやめください」

    摩厳「子画!」
      「花千骨を生かしておくことは断じて出来ぬ」

    その時、輿を覆う布が開かれ、中から千骨が姿を見せた。


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    千骨「白子画」

      「わざわざここへ止めに来たのは、
       私を死なせることに耐えられないからなの?」

      「私たちふたりで一緒に、どこか、この世から
       隔絶された場所に隠れ住むというのはどう?」

      「私は妖神ではなく、あなたも長留の掌門ではない」

      「世間の一切に関わらずに生きていくの」
      「どうかしら?」

    子画「いまは、大局に重きを置かねばならぬ」
      「己を偽るのはやめるんだ」


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    千骨「己を偽っているのはあなたよ!」
      「まさか、私が欲しくはないというの?」

    わざわざ煽りたてるような言葉を口にする千骨に、
    子画が静かに歩み寄る。

    子画「戻りなさい」

    千骨は、子画の腕を掴んで言った。

    千骨「……今すぐ、みなに言って」

      「あなたの手にある絶情池の水で負った傷は、
       なぜ出来たのかを」


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      「肉も骨も削ぎ落して戻らねばならなかったのは
       なぜなのか」

      「あなたが愛しているのはいったい誰なのかを!」

      「言って!」


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      「言えば、ここにいるみなを逃してあげるわ」

    子画「私が認めるかどうかが、本当にそこまで重要なことなのか?」


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      「なぜそこまで深く囚われる必要があるのだ」

    静かに問われ、千骨が一瞬答えに詰まると、
    ふたりのやりとりを聞いていた摩厳が口を挟んだ。

    摩厳「……紫薫(ズシュン)上仙は、師弟のために
       すべての力を使い尽くして死んだ」

      「なぜそなたは、どこまでも子画を追い詰めるのだ」

      「子画は既に修行に専念すると決めているのだ」
      「叛徒めが、これ以上かきまわすのはやめるがいい!」

    千骨はそっぽを向いて、掴んでいた子画の腕を放した。

    千骨「白子画」
      「あなたに最後の機会をあげるわ」

      「もし、河の如く血が流れるのを見たくないのであれば」
      「死を賭して、私と戦いなさい」

      「もし私が負けたら、斬るなり殺すなり、
       あなたが好きなようにすればいいわ」

      「もしあなたが負けたら、あなた一人を殺すだけでなく」
      「ここにいる全員を殺すわ!」

    摩厳「馬鹿な!」
      「今の子画がどうやってそなたの相手になり得るというのだ」

    千骨「もちろん彼は私の相手ではないわ」
      「私はただ、彼に私に挑む機会を与えているだけよ」


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      「……戦うの、それとも戦わないの?」

    子画「……受けて立とう」


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    後半へ続く










    ++++++++++++++++++++



    ※1:呪文的文言と思われます(たぶん)。
       ここを訳していると時間がかかるのでσ(^_^;)
       後で埋めます。とかいって埋めないかも(てへ)

    ※2:ここの千骨の独白全部、英語字幕に従って訳すと中盤
       以下と意味が繋がらないので、中文に従って訳してます。

    ※3:記憶を抜こうとした、は私の勝手な予想です。
       この前にたぶん削除された例のラブシーンがあって、
       千骨はこの時点で子画が自分を愛していることを知らず、
       自分が彼を誘惑して、無理やり彼にそうさせたと思って
       いるので、彼の記憶を抜いてあげようとしたのかと予想。。




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