花千骨 第16話 (翻訳 2/2)

     22,2015 13:55
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    邦題 : 花千骨
    原題 : 花千骨
    英題 : The Journey of Flower 2015

    監督 : 林玉芬(リン・ユーフェン)/ 高林豹(コー・ラムパウ)
    主演 : 霍建華(ウォレス・フォ)/ 趙麗穎(チャオ・リーイン)


    【ご注意】

    ※英文字幕を、中文の助けも借りて日本語字幕にしたものです。
     中国語→英語の段階で意訳されているものが多々ある上、
     英語字幕自体、誤字脱字誤訳が多いため、元の内容と異なる
     可能性があります。意訳が著しい場合、中文を元にしています。

    ※セリフのほとんどに対応していますが、あくまで素人が
     趣味で訳したものなので、「ざっくり内容が知りたい」方向け
     です。正確さを求める方は、公式放送をお待ちください。

    ※素人翻訳ではありますが、転載・再利用などはご遠慮ください。

    楽しんでくださる方がいらっしゃれば、幸甚です。


    ++++++++++++++++++++





    突然姿を見せた主に、単春秋(シャン・チュンチィ)が
    おそるおそる尋ねた。

    単春秋「聖君。なぜおいでに?」

    殺阡陌(シャ・チェンモ)
       「単春秋」


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    殺阡陌「私はそなたに何度言った?」

       「『神器を盗むことは許さぬ』」

       「『神器を盗むことは許さぬ』と」

       「そなた、私の話を、耳のそばを通り抜ける
        風のごとく思うておるのか?」

    単春秋「今回私が大量の兵を動かしたのは、流光琴を
        手に入れ、聖君に献上するためです」

    単春秋が口にした言葉に、殺阡陌が瞠目し振り返った。

    殺阡陌「流光琴だと?」


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    単春秋「はい」

    殺阡陌「流光琴は、太白山にあるのか?」

    単春秋「さようでございます」

    殺阡陌はしばし考え込むと、おもむろに太白の弟子たちのほうへ視線を向けた。

    そして、歌でも吟じるかのように優雅に呟く。

    殺阡陌「ならば、太白を滅ぼすがよい」

       「流光琴を奪い取って来るのだ」

    単春秋「はっ」

    得たりとばかりに笑みを浮かべた単春秋だったが、
    言いにくそうに声を低めて続けた。

       「ああ、しかし……」

       「その流光琴なのですが、花千骨の手にあるのです」


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    単春秋の言葉を聞いて、殺阡陌は視線を千骨のいる階段の上へと向けた。

    そして無言のまま、再びひらりと舞い上がる。

    その姿を見て、単春秋はひとり密かにほくそ笑んだ。







    殺阡陌は、再び階段の上に降り立つと、千骨に笑顔で話しかけた。

    殺阡陌「小さいの。流光琴はまことに
        そなたの手にあるのか?」

       「さあ。姉さんに渡しておくれ」


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    殺阡陌が千骨に手を伸ばすと、千骨はふらつく
    ような足取りで殺阡陌のほうへと歩を踏み出した。

    千骨「お姉さん……」
      「あなたは、七殺派の聖君なの?」

    千骨の悲しそうな声に、殺阡陌の顔から笑みが消える。

    千骨「どうして今までずっと教えてくれなかったの?」

    殺阡陌は眉を下げて答えた。

    殺阡陌「小さいの」

       「姉さんが今までそなたに言えなんだのは、
        恐れたからだ」

       「そなたが姉さんの身分を知れば、おそらくもう
        私のことを気にかけてはくれなくなるのではと」

       「よもやこの身分のために姉さんを嫌い、
        見捨てるというのか?」

    千骨「私は一度もお姉さんの身分を
       気にしたことなんてなかったわ!」

      「でも、どうしてよりによって聖君なの?」


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    千骨の悲痛な叫びに、殺阡陌が視線を落とす。

    千骨「七殺派は、蜀山でみなを殺めただけでなく、
       今はこうして太白山を血で洗っているわ」

      「まさか、これらのことすべて」

      「これらのことを一切、起こらなかったことに
       しろとでもいうの?」

      「……どうして?」

      「お姉さん、どうしてあなたが聖君なの」

      「どうしてあなたが、わたしたち長留が
       ずっと戦ってきた敵なの」

    千骨の糾弾を受け、殺阡陌が悲しそうに反駁する。

    殺阡陌「長留の人間はみな、頭が固く無知蒙昧の輩だ」

       「やつらの罪は深く、死んでもなおその罪は償えぬ」

    千骨「お姉さん!」

      「私も長留の人間よ」

      「彼らはみな、私の兄弟姉妹なの」

      「彼らを殺したいのなら、まず最初に私を殺して!」

    殺阡陌は、悲しそうに眉を下げたまま、
    千骨のほうへと一歩、歩み寄った。

    殺阡陌「小さいの」
       「姉さんを責めないでおくれ」


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       「そして、姉さんのことを怒らないでほしい」

       「彼らの命を助けることはできる」

       「しかし、私は流光琴だけは必要なのだ」

    千骨は目を伏せ、しばらく考え込んでいたが、
    やがて唇を噛むと、小さな声で呟いた。

    千骨「……流光琴は、あなたには渡さない」

      「お姉さん。もしどうしても欲しいのなら」

      「ならば、私を殺して」

      「私の墟鼎から取り出せばいい」

    顔を上げると、きっぱりとそう言い放った千骨に、
    殺阡陌は何度か苦しそうに息を呑んだ。

    するとそこへ、単春秋が、太白の弟子を
    ふたり抱えて舞い降りてきた。

    弟子たちを地面に転がし、踏みつけにすると、
    傲岸不遜に言い放つ。

    単春秋「もしそなたが流光琴を渡さぬなら」

       「渡す気になるまで、こやつらを殺していく」


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    地面に転がした弟子のひとりを持ち上げると、
    空へと放り投げ、容赦のない一撃を加えた。

    あまりのことに千骨が茫然としていると、
    単春秋はさらにもう片方の弟子も持ち上げようとする。

    千骨「やめて!」

    思わず駆け寄ろうとした千骨を、殺阡陌が制した。


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    そして、短く配下に命じる。

    殺阡陌「やめよ!」

    単春秋は、千骨を見てにやりと笑って手を止めた。

    千骨は、はっと気付いて殺阡陌から身を離す。

    殺阡陌「小さいの」

       「姉さんは、なんでもそなたが望むようにしよう」

       「ただこの流光琴だけは別なのだ」

    激昂するでなく、ただ悲しみをたたえた瞳で
    静かにそう告げた殺阡陌に、千骨がそれ以上
    何も言えずにいると、そこへ東方が口を挟んだ。

    東方「聖君、骨头」
      「少し私の話を聞いてもらえないか?」

      「双方がともに神器を手放すことを
       よしとしない以上、こんな風に殺し合いを
       続けても、ただ無辜の人間を傷つけるだけで、
       何もよい結果にはならない」

      「もし聖君が困らぬのであれば」


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    東方「武芸の試合をして、神器をどうするか決めると
       いうのはどうかな」


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    殺阡陌「よかろう」
       「それでかまわぬ」

    殺阡陌があっさり承諾し、不敵な笑みを浮かべると、
    単春秋が慌てたように割って入る。

    単春秋「聖君、なりませぬ!」

       「栓天鎖、幻思鈴、流光琴は、
        既に我らのものも同然」

    殺阡陌「黙れ!」

    単春秋の抗議を一蹴すると、殺阡陌は
    改めて東方に向き直った。


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    殺阡陌「神器をひとつ、交換に用いるとしよう」

       「もし我らが負ければ、
        そなたらに不帰硯を渡す」

       「もしそなたらが負けたなら、
        私は流光琴のみを所望する」

    東方「いいだろう。これで決まりだ!」

    千骨「東方!」

    不安そうに声を上げた千骨を、東方が押しとどめる。

    東方「骨头、心配するな」


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    東方「君のために、絶対にもうひとつ
       神器を手に入れてみせるから」







    子画が一路、太白への道を急いでいた。

    子画(殺阡陌と小骨が、お互いに面識が
       あるなどとは、思いもよらなかった)

      (ただ、殺阡陌の思考は常人のそれとは異なる)


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      (流光琴のためであれば、彼は本当に
       太白を屠るやもしれぬ)







    広場を挟んで、太白山と長留の弟子たちと
    七殺派が向かい合っていた。


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    千骨が不安を滲ませて落十一に尋ねた。

    千骨「十一師兄」

      「師父はいつここへお着きになるのでしょう」

    落十一「すぐだ、きっとすぐお着きになる」

    再び正面に目を向けた千骨は、
    悲しみと困惑が入り混じった表情で呟く。

    千骨「お姉さん……」
      「どうしてそこまでして流光琴が必要なの?」

    広場の中央で、東方と向かい合っていた
    単春秋が口を開いた。

    単春秋「どのようにして競うのだ?」

    問われた東方が、少し考えてから笑顔で答えた。

    東方「三回勝負して、二勝したほうが勝ち」


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    東方「両陣営の各派から三名ずつ出し、
       それぞれ戦うというのはどうかな?」

    単春秋「よかろう」

    東方「では、それで決まりだ」
      「聖君が証人だ」

    単春秋が後ろを振り向くと、孔雀の扇で
    扇ぎながら、殺阡陌が優雅に頷く。


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    曠野天「聖君、護法」

       「私、曠野天が初戦に臨みたいと思います」

    殺阡陌が頷くと、単春秋も頷いてみせた。

    単春秋「ではおまえたちからは、誰が出て戦うのだ?」

    落十一「私が行こう」

    落十一が名乗りを上げると、朔風が驚いて振り返った。


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    朔風「私が行ったほうがいいのでは」
      「師父は怪我を負っておられます」

    落十一「私が行く」
       「そなたらでは彼の相手にはならぬ」

    朔風「師父、しかし……」

    その時、東方が明るく声を上げて割り込んだ。

    東方「ああ、私が出る! 私が出る!」


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    東方「曠護法。あなたと私は、まさに
       針と麦ののぎ、石と卵だ」

     (※針と麦ののぎ:ふたつの勢力が鋭く対立すること)
     (※石と卵:はるかに強い相手に攻撃を
           しかけて自滅するの意)

      「我らふたりは、競い合うに最も相応しい!」

    曠野天「おまえが相手だと?」

    あからさまに見下したように曠野天が鼻で笑う。

    般若花も唇の端を上げて薄く笑った。

    千骨「東方……」

      「東方、彼は、本の虫よ」
      「どうやって勝てるというの?」

    千骨が不安そうに呟く。

    東方「聞いたところによると、曠護法は、
       奇門仙術について、少しはご存知だとか?」

     (※奇門仙術:奇門遁甲。占い、または占いの
            要素を用いた呪術の一種)

      「機関八卦については、
       私にも少々心得があります」

      「それゆえ、我らが競い合うことは、
       何の問題もありませんよ」

    東方の言葉に曠野天が激昂する。

    曠野天「『少しはご存知』だと?!」
       「いいだろう、かかって来い!」


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    太白陣営では、緋顔掌門が落十一に尋ねていた。

    緋顔掌門「十一、あの東方彧卿という者、
         彼は何者なのだ? 大丈夫なのだろうか」

    落十一「おそらく彼は、時間稼ぎのために
        策を弄しているのだと思います」

    緋顔掌門が得心したように頷く。

    緋顔掌門「今となっては、ただ賭けるしかないな」

    落十一が頷いた。

    その横で、千骨が焦燥を滲ませ小さく呟く。

    千骨「師父……」

      「いったいいつ、いらっしゃるのですか……」

    広場では、曠野天が手の内に気を集めている。

    それを見て、長留の弟子たちが囁きをかわす。

    弟子乙「勝てるんだろうか?」

    弟子甲「わからない」

    曠野天が気合いを込めて叫ぶと、広場の中央に、
    異空間へと通じる大きな門が口を開けた。


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    曠野天「では、お相手願おうか」

    東方「いいだろう」

    東方が、余裕たっぷりで大きく開いた扉をくぐる。


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    そこにはたくさんの木偶(でく)が、
    規則正しい間隔でずらりと並んでいた。

    東方は、その間をのんびりと歩いていたが、
    突然、この異空間を抜け出る方法を求めて走りだす。

    しかし、東方が行く先々で木偶たちが道を遮る。

    そこは、永遠に抜け出ることが叶わぬ迷宮のようだった。

    だが、一計を案じた東方は、木偶のひとつに傷をつける。


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    そしてもと来た道を戻ると、戻った先で、
    先ほど傷をつけた木偶を見つけた。

    そこから、身体全体で距離を測るように、
    東方は舞うように軽やかに歩を進めていく。

    東方を追う木偶たちが、徐々に彼を追い詰める。

    やがて東方は、この異空間の『解』となる
    一点を見つけると、その場で両手を広げた。

    すると、周りを囲んでいた木偶たちが
    彼を中心にして、放射状に倒れていく。


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    その時、広場にいた曠野天が、はっと顔を上げた。

    異空間が解かれ、広場にあった門が消滅する。

    そして無事に迷宮を抜け出した
    東方が、再び広場に姿を現した。

    優雅に扇をひらめかせながら東方は、
    七殺派に向けて余裕の笑みを浮かべてみせる。


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    いならぶ太白の弟子たちが一斉に快哉を叫んだ。

    「彼の勝ちだ! 彼が勝った!」

    長留の弟子たちにも、笑みが広がる。

    千骨も嬉しそうに軽水と笑みをかわした。

    千骨「東方が勝ったわ!」

    広場の中央で、余裕綽綽の笑みを浮かべて
    いる東方に、曠野天がわなわなと震えながら
    指を突きつける。

    曠野天「きさま……!」

    曠野天は怒りに震えながら東方を睨み
    つけていたが、東方はただ笑いながら
    扇で扇いでいる。

    そして曠野天は、はっと現状に気付くと
    単春秋を振り返った。

    単春秋の冷ややかな視線が曠野天を射抜く。

    単春秋「私は、そなたの機関術は
        天下第一であると思っていたのだがな」

    曠野天がその場に跪き、地に頭をつける
    ようにして懇願する。


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    曠野天「護法、どうか私の命をお助け下さい」

       「聖君、どうか命だけは、護法!」

    単春秋「しかし、やつらはもう他に出せる者とて
        すでにおらぬだろう」

       「残り二戦は、必ずや我らが勝つこと疑いない」

    単春秋の言葉に、曠野天が殺阡陌に視線を向けると、
    殺阡陌もまた興が失せた表情で言い捨てた。

    殺阡陌「まだ下がらぬ気か?」


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       「まさかまだ恥をかき足りぬと
        いうのではなかろう」

    曠野天「ありがとうございます、聖君」
       「ありがとうございます、護法」

    かろうじて命拾いした曠野天が、慌てて後ろに下がる。

    いっぽう、太白側の弟子たちは、初戦を勝利した喜びにわいていた。

    「我らが勝った!」
    「いいぞ!」

    東方が、掌門たちに一礼してから千骨に歩みよると、
    千骨は笑顔を浮かべた。

    千骨「東方!」
      「あなた、本当にすごいわ」


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    そう言って笑った千骨と拳を合わせると、
    東方もまた笑みを刷いた。

    七殺派の陣営では、云翳(ユンイ)が
    殺阡陌のそばに膝をつき、願い出ていた。

    云翳「聖君。次の一戦は私に行かせてください」

    云翳に目を向けた殺阡陌が、静かに頷く。

    云翳が広場に進み出るのを見た千骨が、
    再び不安げな表情を浮かべる。

    千骨「東方。云翳の功力は、曠野天を上回るわ」

      「今はみな負傷している」

      「第二戦は、誰が戦いに出るの?」

    問われた東方は、ふっと笑みを浮かべると、
    脇道のほうを目で示してみせた。

    つられてそちらへ目を向けた千骨が、
    驚いて瞠目する。

    植木の奥の通路から姿を見せたのは、
    云隠と蜀山の弟子たちの一行だった。

    云隠は、まっすぐ千骨の前までやってくると
    一礼した。

    云隠「掌門にご挨拶いたします」

    蜀山の弟子たちが一斉に続く。

    「掌門にご挨拶いたします」


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    千骨「云隠。なぜあなたたちがここに?」

    云隠「掌門。我らもさきほど到着していたのです」

      「ここへ向かう途中、偶然東方先生にお会い
       したのですが」

      「彼は、第二戦では、単春秋が必ずや
       私の師弟を出してくると予想し」

      「それゆえ、私に引き継ぐため、
       先に姿を見せるなとおっしゃったのです」

      「掌門、この一戦は私にお任せ下さい」

    千骨が笑顔を浮かべると、云隠は広場に進み出た。

    みなが固唾をのんで見守る中、
    広場の中央で、云隠と云翳が睨み合う。

    戦いを始める前に、云隠が口を開いた。

    云隠「師弟」


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      「頑なに非を認めず、誤った道を
       行くのはもうやめるんだ」

      「私と一緒に戻ろう」

    云翳「『師弟』?『戻ろう』?」

      「まさか、懲罰を受けるために俺に戻れとでも?」

    云隠「私には分かっている」

      「師父を殺したのも、栓天鎖を奪ったのも、
       そなたではないと」

      「単春秋と、他の者たちの仕業だろう」

    云隠の言葉を云翳は鼻で笑うと、吐き捨てるように言った。

    云翳「俺がやったことだ!」

    云隠「私は信じない」

      「いったい、そこまで隠さねばならぬ
       どんな理由があるというんだ?」

      「彼らは何かを用いて、そなたを
       脅しているのではないのか?」

    云翳「誰も俺を脅してなどいない」
      「ただ取引をしただけだ」

      「俺は、彼らが栓天鎖を手に入れるのを手伝う」
      「彼らは、俺の顔を元に戻すのを助ける」


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    云隠「そなたの顔だと?」

    云隠が、記憶を呼び起こすように視線を彷徨わせる。

    云隠「掌門はかつて、そなたと私の顔が
       そっくり同じだと言っていた」

      「それは本当なのか?」

    云翳「さあな、当ててみろ」

    言うなり、云翳は云隠に斬りかかった。

    ふたりは激しく斬り合いながら空へと飛びあがる。

    ふたりが戦う様子を見上げていた単春秋が
    訝しげに呟いた。

    単春秋「なぜ云翳は、ずっと後退し続けているのだ?」

    いっぽう、太白側では、
    千骨が笑顔で東方を称えていた。

    千骨「東方、あなたの策は、本当に神機妙算ね」

      「ますますあなたを尊敬するようになったわ」

    千骨の賛辞に、東方が嬉しそうに笑った。

    その時、云翳の剣が弾かれた。

    遠く、太白殿の壁を越えて飛んでいく剣を追って
    云翳が飛び去り、それをさらに云隠が追う。

    飛び去る二人を茫然と見守る人々をよそに、
    云隠と云翳は、太白殿から離れた草原へと降り立った。

    地面に転げ落ちた云翳に、云隠が詰め寄る。

    云隠「そなたは逃げられはせぬ」


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      「私と一緒に戻るんだ」

    云翳「どうやら今日は、私を見逃す気はなさそうだな」

    云隠「私はただ、真実が知りたいだけだ」

    云翳「真実?」

      「ならば今、その真実とやらをおまえに見せてやろう」


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    云翳はゆらりと立ち上がると、頭の後ろの紐を解き、
    ゆっくりと仮面を外していった。


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    仮面の下から現れた顔を見て、云隠が目を見開く。

    驚く云隠を見て、云翳がにやりと笑った。

    云隠「そなたはいったい誰だ」


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    いっぽう、ふたりがその場を離れた後の
    太白山の広場では、ことのなりゆきがわからず
    みながざわめいていた。

    その中で、殺阡陌がゆっくりと口を開く。

    殺阡陌「あれは、故意に剣を放したのだ」


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    殺阡陌「だがあのふたりの功力を見る限り」

       「どちらが何をしようと、すぐに勝敗が
        決することはなかろう」

       「彼らは、己の私怨を晴らしに行ったのだ」

       「この一局は、引き分けとしようではないか」

    殺阡陌の言葉に、落十一と緋顔掌門が顔を見合わせ、頷いた。

    落十一「いいだろう。我らも同意する」

    それを聞いた曠野天が、単春秋に歩み寄って囁いた。

    曠野天「護法」

       「聖君はいったいどういうおつもりなのでしょう」

       「いったい、我らに勝って欲しいのか、
        それとも負けて欲しいのか」

    配下の言葉に、単春秋が目を剥いて振り向いた。

    単春秋「そなた、何と言った?」

    曠野天「申し訳ございません」

    単春秋の射殺すような目線に、
    曠野天が慌てて下がる。

    単春秋は、殺阡陌を振り返ると、頷いて見せた。

    殺阡陌が黙って頷きを返すと、
    単春秋が広場の中央へと歩み出た。

    単春秋「この一戦は私が相手だ」

    太白側に、緊張が走る。

    朔風が無言で前に出ようとした時、東方が制止の声を上げた。

    東方「待った!」


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    東方「来るべき人が来たようだ」

    そう言って東方が、背後を振り返ると、
    つられてみなが後ろを振り返った。

    階段の上に、武装した兵士たちが姿を現す。

    そして、その兵士たちの上を飛び越えるようにして
    階段の上から広場に飛び降りたのは、孟玄朗だった。


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    軽水が破顔する。

    軽水「孟兄さん!」


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    広場に降り立った孟玄朗は、背後を振り向き
    歩み寄ると、挨拶した。

    孟玄朗「各位、遅くなりました」


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    みなに一礼したあと、孟玄朗は千骨に歩みよった。

    孟玄朗「千骨、大丈夫か?」

    千骨「私は大丈夫よ。朗兄さん、心配しないで」

    駆けつけた孟玄朗が、千骨を気にかける
    様子を見ながら、単春秋が眉を寄せる。

    単春秋(まさか、聖君が流光琴ですら
        力ずくで奪い取ることを承知されぬのは)

       (あの娘のせいだというのか?)

    東方「陛下。早く片をつけてしまいましょう」

    孟玄朗「そう容易いことでもないが」

    孟玄朗はちらりと単春秋を一瞥し、
    千骨を振り返ると続けた。

    孟玄朗「ここ最近私は、以前よりはずっと強くなったのだ」

       「この一戦は、私に単春秋と戦わせて欲しい」

    そう言って、ひらりと身を翻すと
    孟玄朗は広場のほうへと進み出た。

    その背を、軽水が嬉しそうに見つめている。

    しかしその時、突然黒い影が動いたかと思うと、
    孟玄朗の脇を掠め去った。

    孟玄朗が驚いて振り返ると、
    軽水も異変に気付いて空を振り仰いだ。

    黒い影が、千骨を攫って空へと舞い上がっていくのが目に入る。


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    軽水「単春秋が、不帰硯を使って千骨をさらっていったわ!」

    殺阡陌がはっと上を見上げ、瞠目する。

    片手に千骨を抱えた単春秋は、
    もう片方の手に気を集めながら叫んだ。

    単春秋「まこと害にしかならぬ娘よ!」


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    単春秋「そなたを殺して、直接流光琴を取り出してくれる!」

    そう言って手を振り上げた単春秋に
    千骨が必死で叫び返す。

    千骨「あなたの思い通りになどさせないわ」

      「少なくとも、あなたも道連れよ!」

    その時、単春秋めがけて衝撃波が飛んできた。

    単春秋は咄嗟に応戦するが、受け切れず、
    反動で弾き飛ばされる。

    単春秋と、彼の手を離れた千骨は、それぞれ空中に放りだされた。

    弾き飛ばされた単春秋を、後を追ってきた殺阡陌が空中で捉える。

    同じく放りだされた千骨を、空で抱きとめたのは
    ────子画だった。


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    千骨「師父」

    自分を抱きとめた人物が誰かを認めると、
    千骨は嬉しそうな笑みを浮かべる。

    子画「なにゆえそなたはそうも愚かな真似をするのだ」

    子画は、そう言って単春秋と刺し違えようとした
    千骨をたしなめたが、彼女はなお毅然と答えた。

    千骨「どんな手を使ってでも、彼らに流光琴を
       渡すわけにはいきません」

    子画「次からは、こんな真似はするな」

    千骨「はい、師父」

    千骨が笑顔で頷くと、子画は
    投げ出されたもう一人のほうへと視線を向けた。

    一方、単春秋を捉え、共に地上に降り立った
    殺阡陌は、不快もあらわに配下を叱責した。

    殺阡陌「そなた、よくも大胆不敵な真似をしてくれる」


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    単春秋「聖君、あの娘は男を惑わし、
        すべてを台無しにする魔性の女です」

    殺阡陌「黙れ!」

       「戻ったらそなたをどうするか、
        楽しみにしているがいい!」

    一切の反駁を許さぬほどの殺阡陌の怒りを
    目のあたりにし、単春秋はただ目を伏せる。

    殺阡陌は荒く息を吐いた。







    広場を挟み、ふたたび七殺派と
    太白側とがにらみ合っていた。

    太白側には、既に蓬莱始め、各派の掌門と援軍も揃っている。


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    それぞれの先頭に立っているのは、
    殺阡陌と白子画だった。

    みなが緊迫の面持ちでふたりを見つめる中、
    東方はひとり、興味深そうにことの成り行きを見守っている。


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    曠野天が単春秋に囁いた。

    曠野天「護法」

       「やつらの面子はみな出揃ったようです」

       「今、強硬に攻めたとしても、
        優位に立つのはもはや難しいかと」

    同じく殺阡陌と白子画のにらみ合いを見守っていた
    長留の弟子たちの中で、軽水が落十一に尋ねた。

    軽水「十一師兄」

      「尊上と殺阡陌では、どちらがより強いのですか?」

    落十一「もちろん尊上のほうが強いに決まっている」

    広場に立った殺阡陌が、優雅に扇で扇ぎながら口を開く。

    殺阡陌「白子画(バイ・ズファ)」

       「また会うたな」

       「あれからずいぶん経つと言うのに、
        そなたの容貌が依然、私の美しさに
        及びもせぬとは思わなんだ」


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    そう言って殺阡陌は、ふふふ、と含み笑ったが、
    子画はただ黙して聞いている。

    殺阡陌「今さっきの争いは、数には含めぬ」

       「この一戦は、私が単春秋に替るとしよう」

       「しかし私と勝負するのは、
        あの未熟な小皇帝ではありえぬ」

       「白子画よ」

       「そなたもそろそろ、自ら身体を
        動かすべきではないか?」

    子画「いいだろう」


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    子画「聖君にお相手願うとしよう」

    殺阡陌は唇の片端を歪めて不敵な笑みを浮かべると、
    扇を投げ捨て、空へと舞い上がった。


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    同時に子画も舞い上がる。

    空中で、ふたりの気が正面から激しくぶつかり合った。


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    第17話に続く









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    Comment 2

    2015.11.23
    Mon
    15:20

    ぴょんこ 

    URL

    ナイスキャッチ♪

    響さま、こんにちは〜。
    今回、東方がめっさイイ仕事していますね。
    仮病対決していた人とは別人の様です。笑
    最後の含み顔はちょっと気になりますが・・

    そして、久しぶりの師父!
    千骨を空中キャッチ!くぅぅ〜たまらん。
    姉さんと師父の勝敗も気になります・・
    「美」においては姉さんの勝ちらしいですが。笑

    編集 | 返信 | 
    2015.11.23
    Mon
    19:23

    響 

    URL

    To ぴょんこ さま

    ぴょんこさま、こんにちは☆

    今回は東方大活躍ですね♪ というわけで、
    仮病対決は忘れましょう(笑)

    含み顔、気になりますか(。・ω・)w
    ネタバレするとアレなので、詳述は避けます
    が、今後、徐々にアグレッシブな東方も出て
    きて、あれこれ活躍します。

    好みが分かれるところかと思うんですけど、
    わたしはけっこう好きですねー(笑)

    子画より東方を支持したくなる瞬間もある
    ほどです(。・ω・)ええ。

    そして師父キャッチ!!
    萌えますよねえええええ!(*´Д`) この
    ワンシーンで、一気にフル充電されました(笑)

    どこまでも『美』が基準の姐姐も面白すぎ
    ますね(^ω^) で、実は、勝負の結果より
    途中が楽しいので、ご期待ください(笑)

    編集 | 返信 | 

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